洗濯機置き場の床や壁に、ひっそりと存在する排水口。多くの人は洗濯機の排水ホースをそこに差し込むだけで、その構造を意識することはないかもしれません。しかし、その排水口には「排水トラップ」という、衛生的で快適な生活を守るための非常に重要な部品が備わっているのが一般的です。排水トラップとは、排水管の途中に設けられた湾曲した部分のことで、内部に常に一定量の水(これを「封水」と呼びます)を溜めておく仕組みになっています。この封水が、下水道と室内を遮断する「水のフタ」の役割を果たします。では、なぜこの水のフタが必要なのでしょうか。主な理由は二つあります。一つは「悪臭の防止」です。下水道管の中は、様々な生活排水が流れ込むため、常に不快な臭気が充満しています。もし排水トラップがなければ、その下水の臭いが排水管を逆流し、排水口から室内へとダイレクトに侵入してきてしまいます。洗濯機周りが常にドブ臭い、ということになりかねません。もう一つの重要な役割が「害虫の侵入防止」です。ゴキブリやコバエ、ムカデといった害虫は、暗く湿った下水道管を格好の住処や通り道としています。封水という水のバリアがなければ、彼らは排水管をいとも簡単に駆け上がり、排水口から室内へと侵入できてしまうのです。このように、排水トラップは単なる排水設備の一部ではなく、私たちの生活環境を悪臭や害虫から守るための、いわば防衛ラインなのです。もしご自宅の洗濯機置き場の排水口に排水トラップがなく、ホースが直接パイプに差し込まれているだけだとしたら、それは家の防御に穴が開いているのと同じ状態と言えるでしょう。