洗面所の排水が詰まってしまった際、慌ててやかんでお湯を沸かし、排水口へ注ぎ込むのは非常に危険な行為です。インターネット上には「熱湯でつまり解消」という情報が散見されますが、これは多くの誤解を含んでいます。まず、洗面所のつまりの原因物質を考えてみましょう。台所のつまりは固まった食用油が主原因ですが、洗面所は髪の毛が複雑に絡み合い、そこに石鹸カスや皮脂がコーティングされた「ヘドロ状の塊」が原因です。髪の毛は熱湯をかけても溶けることはありません。むしろ、熱によって皮脂やタンパク質汚れが変質し、より強固に配管へこびりついてしまうケースもあります。さらに深刻なのが、排水管へのダメージです。現代の住宅の排水システムは、硬質塩化ビニル管と呼ばれる素材で構成されています。このパイプは非常に優れた耐久性を持ちますが、唯一の弱点が「熱」です。熱湯が流れるとパイプ自体が伸び縮みし、その負荷がジョイント部分に集中します。その結果、接着剤が剥がれたり、ゴムパッキンが劣化したりして、目に見えない壁の裏側で漏水が始まるのです。安全につまりを解消したいのであれば、給湯器の設定温度を五十度から六十度に設定し、そのお湯を使って作業を行うのが鉄則です。具体的な方法としておすすめしたいのが、重曹とクエン酸の活用です。排水口にカップ一杯の重曹を振りかけ、その上から同量のクエン酸(または酢)を注ぎます。化学反応で発生する細かい泡が汚れの隙間に入り込み、剥がしやすくしてくれます。そのまま二十分ほど放置した後、六十度以下のぬるま湯をバケツ一杯分ほど勢いよく流し込みます。この方法なら、配管を熱で溶かすリスクをゼロに抑えつつ、汚れを効果的に除去できます。もしこれでも改善しない場合は、物理的なワイヤーブラシを使用するか、専門業者に依頼すべきサインです。無理に熱湯の温度を上げて解決しようとすることだけは、絶対に避けるべき賢明な判断と言えます。
沸騰したお湯が洗面所のつまりを悪化させる驚きの理由と解決法