トイレに入った際、足元にわずかな違和感を覚えることがあります。スリッパの底が少しだけ湿っていたり、便器と床の設置面に薄く水が浮いていたりする状態です。ドバドバと溢れ出すわけではなく、拭き取っても翌日にはまた同じ場所がじわじわと濡れている、そんな静かなトラブルに悩まされる方は少なくありません。この現象が厄介なのは、一見するとどこから漏れているのかが判然としない点にあります。単なる結露だろうと放置してしまうケースも多いのですが、実はその裏には住宅の寿命や健康を脅かす重大なサインが隠されている可能性があります。トイレの床がじわじわと濡れる主な原因は、大きく分けて三つのルートが考えられます。一つ目は便器本体やタンクの不具合です。タンクの底にあるボルトの緩みやパッキンの劣化、あるいは便器そのものに目に見えないほどの細かなヒビが入っている場合、そこから時間をかけて水が滴り落ちます。二つ目は給水管の接続部分です。壁や床から伸びる配管の継ぎ目から、一滴ずつ水が伝い落ちて床に溜まっていくパターンです。そして三つ目が最も深刻な、便器と床下の排水管を結ぶ接続部分の劣化です。ここには排水アジャスターやフランジパッキンと呼ばれる部品がありますが、これらが経年劣化で硬化したり破損したりすると、水を流すたびに床下へ漏れ出し、それがじわじわと床の表面に染み出してくるのです。こうした漏水は放っておくと床材の腐食を招き、シロアリの発生やカビによる健康被害、集合住宅であれば階下への漏水トラブルへと発展しかねません。まずは水の色や臭いを確認することが大切です。透明で無臭であれば給水系や結露の可能性が高いですが、濁っていたりアンモニア臭がしたりする場合は、排水系のトラブルを疑うべきです。床の接地面をティッシュで押さえてみて、どこから水が染み出してくるのかを特定する作業から始めてみましょう。早期の発見と適切な処置こそが、大切な住まいを守るための唯一の手段なのです。