それは家族が寝静まった深夜、私が一人で明日の弁当の準備を終えて片付けをしていたときのことでした。シンクの水を流すと、排水口の奥底からボコボコという、まるで何かが訴えかけているような低い音が響いてきました。最初は気のせいかと思いましたが、翌日になってもその音はやまず、むしろ水を流すたびに音は大きくなり、最後には水が引くまでに時間がかかるようになってきました。築十年を過ぎ、これまで大きなトラブルがなかった我が家のキッチンに、目に見えない異変が起きていることは明白でした。不安に駆られた私は、インターネットで原因を調べ、それが排水管の詰まりの初期症状であることを知りました。長年、揚げ物の油には気をつけてきたつもりでしたが、日々の食器洗いから出る微量な油脂が長い年月をかけて蓄積し、排水管を蝕んでいたのです。私は意を決して、以前ポストに入っていた水道修理業者のチラシを手に取り、見積もりを依頼することにしました。やってきた作業員の方は、特殊なカメラで管の内部を見せてくれました。画面に映し出されたのは、白く固まったラードのような塊が管の壁をびっしりと覆い、わずかな隙間しか残っていない衝撃的な光景でした。これでは水がスムーズに流れるはずもありません。数時間にわたる高圧洗浄の結果、ボコボコという音は完全に消え、驚くほど勢いよく水が吸い込まれていくようになりました。作業を終えた後の清々しさは例えようもありません。今回の経験で痛感したのは、キッチンの排水口は外からは見えなくても、家の血管のようなものであるということです。不快な音を「いつものこと」と見過ごしていたら、今頃はキッチンの床が浸水して大惨事になっていたかもしれません。あの日、深夜のキッチンで聞こえた不気味な音は、大きな被害を未然に防いでくれた警告だったのだと、今では感謝の気持ちすら湧いています。それ以来、私は毎晩の片付けの最後に、感謝を込めて排水口を磨くのが日課となりました。
深夜のキッチンに響く異音の恐怖と排水管清掃の記録