全ての始まりは、本当に些細なことでした。シャワーを浴び終え、蛇口を固く閉めた後も、シャワーヘッドの先端から、ポタッ…ポタッ…と、水滴が、まるで涙のように、滴り落ちていたのです。最初は、「残り水だろう」と、特に気にしていませんでした。しかし、その水滴は、数分経っても、一時間経っても、止まる気配がありません。そして、数週間後には、ポタポタという可愛らしい音は、チョロチョロという、より明確な水の流れへと、その姿を変えていました。それでも、当時の私は、「まあ、水道代が少し上がるくらいだろう」「修理を頼むのも面倒だ」と、その問題を、見て見ぬふりをし続けてしまったのです。それが、後に、私にもっと大きな代償を支払わせる、愚かな判断であったことに、気づくこともなく。数ヶ月が経過した、ある日のこと。私は、浴室の壁の隅や、床のタイルの目地に、黒い点々とした「カビ」が、広範囲にわたって発生しているのに気づきました。そうです、あの、常に漏れ続けていたシャワーヘッドからの水滴が、浴室全体の湿度を、常に高い状態に保ち、カビにとって、最高の繁殖環境を作り出してしまっていたのです。慌てて、強力なカビ取り剤で掃除をしましたが、一度根を張ってしまったカビは、非常にしぶとく、完全に取り除くことはできませんでした。そして、追い打ちをかけるように、水道局からの検針票を見て、私は愕然としました。そこには、普段の月の、二倍近い水道料金が、記載されていたのです。あの、チョロチョロという、か細い流れが、一ヶ月、二ヶ月と積み重なることで、これほどまでの無駄な水を、垂れ流していたとは。私は、自分の愚かさに、心底うんざりしました。結局、私は、水道修理業者に、シャワー水栓の交換を依頼し、さらに、カビだらけになった浴室の、専門的なクリーニングも、追加で依頼する羽目になりました。最初の段階で、きちんと修理をしていれば、数万円で済んだはずの問題が、私の「放置」という選択によって、何倍もの出費と、そして、カビとの終わりのない戦いという、不快な置き土産を残していったのです。あの、ポタポタという小さな水滴は、私の怠惰な心に警鐘を鳴らす、小さな、しかし、重要なサインだったのだと、今なら、そう思います。
私がシャワーヘッドの水漏れを放置した結果